クラウドファンディング、挑戦の裏側とは―挑戦者×キュレーター×併走者へのインタビュー

こんにちは!Tsukuba Place Lab(以下、Lab)のスタッフ(以下、Labスタッフ)として関わっていたとしちるです。

2019年初夏、なにか新しいことにチャレンジしてみたい気分に誘われますね!

「挑戦」というのはLabのキーワードです。Labが出来上がったのもまさしくそんな「挑戦」を体現したクラウドファンディングによるものでした。

クラウドファンディングをきっかけに、つくば市のみならず、茨城県内はもちろん、全国さまざまな地域の方々―学生、住民、起業家、行政職員、活動家 etc.―との「関わり」が次々と生まれていったのが「Lab」という場所なのです。

僕はLabスタッフではなくなったものの、人と人とが偶発的に集う場にすること、ただ集うだけではなく、「挑戦」する機会を通してLabに関わる人々の活性化につながることを目指そうとする理念には共感する思いを今でも抱いております。

もうひとり、Labスタッフの卒業生となるのが平塚万里奈ことまりあんぬです。彼女は、毎年つくば駅前で行われる「ふるさとつくば ゆいまつり(以下、ゆいまつり)」の代表も務めてきました。19年3月、第8回となるゆいまつりを開催するにあたって実施したクラウドファンディングを介して、まりあんぬはまさに自身にとっての「挑戦」と人と人との「関わり」を得る経験をしたそうです。

今回、挑戦者であるまりあんぬとクラウドファンディングサービスReadyforのキュレーターとして関わった夏川優梨さん(以下、なっちゃん)、さらに伴走者となったLab代表の堀下恭平さん(以下、ほりぴ)に、実施した背景や経緯についてお聞きしました。

まりあんぬ
(平塚 万里奈)

ゆいまつりクラウドファンディング起案者/挑戦者
1995年、埼玉県久喜市生まれ。茨城県つくば市在住。
筑波大学大学院に所属し、都市計画やまちづくりを学ぶ。まちの実践的な取り組みとして2014年からふるさとつくばゆいまつりの活動にジョインし、2016年から代表を務める。まちへの間口を広げることを目的とし、2019年1月末にゆいまつりとして初めてのクラウドファンディングに挑戦し、1ヶ月で目標達成。その他、つくば経済新聞副編集長、つくばクラフトビアフェスト副実行委員長、ラヂオつくばパーソナリティを務める。
Readyforローカル事業部マネージャー / キュレーター
茨城県結城市出身。2014年11月にReadyfor(レディーフォー)にジョインし、2016年よりキュレーター部門のマネージャーとして年間1,000件以上のプロジェクトのサポートを行う。2018年よりローカル部門のマネージャーに従事。キュレーターとしては、ローカル、まちづくり、場づくりのプロジェクトを中心に累計2億円以上の達成支援や地方のプロジェクト発掘のためのイベント企画を実施。准認定ファンドレイザー。

なっちゃん
(夏川優梨)

ほりぴ
(堀下 恭平)

Tsukuba Place Lab代表 / 地域コーディネーター
熊本市生まれ、つくば市在住。筑波大在学中にまちづくり会社で最初の起業。2016年108万円をクラウドファンディングで資金調達しTsukuba Place Labを創業。2018年同じく318万円を資金調達しup Tsukubaを創業。過去8回の起案/サクセス経験を持つ。日本初大学密着クラウドファンディング筑波フューチャーファンディング – TFF 理事。あらゆる挑戦を応援することがお仕事。
元Labスタッフ/聞き手
日本サッカー協会に所属するコーチを目指して筑波大学体育専門学群を目指すも、宅浪生活2年間を送った後、国際総合学類に入学。タイにて日本語指導と留学も経験。2019年現在、同大学大学院国際日本研究専攻所属(休学中)。専門は社会文化コミュニケーション/ディスコース研究。研究テーマは自己責任論や大学論。「教養」をテーマに活動中。

としちる
(青山 俊之)

クラウドファンディングとは

まずはじめに、数々のクラウドファンディングを実施してきた堀下さんにお伺いします。一言でクラウドファンディングをどう説明しますでしょうか?

としちる

ほりぴ

資金調達としてだけ考えるならばコスパの悪い手段かな。事業計画書を書いて銀行で融資をもらう方が絶対にコスパはいい。だけれども、より多くの人に意志を表明しながら巻き込み、巻き込まれてプロジェクトを推し進めるために上手く使えれば有効になりうるものだと思っている。

ほりぴ

強く言ってしまうと、クラウドファンディングは単にお金を集める手段ではないし、やったからと言って集まるものでもない。あくまで「労力のかかる」ものであることを前提にして捉えた方がいいと思っているよ。

僕もかつてクラウドファンディングを実施したのでよく分かります。良い意味で支援してくれる人との関係性は作れるのだけど、悪い意味で属人的でもあるから、その関係性が上手く残るものもあれば残らないものもありますよね。普段から表立って活動している人には向いているという意味で、玄人向けの資金調達手段だなと感じています。

としちる

ほりぴ

だからこそクラウドファンディングを実施するにあたってプロとしてサポートしてくれるキュレーターの存在は大事だと思ってる。
クラウドファンディングは「誰でも利用できるが、誰もが簡単に使いこなせるものではない」ですね。個人としてもサービス提供側としてもクラウドファンディングをはじめることのハードルを下げていきたいとは思っています。ただ、掲載しただけでお金が集まるツールではなく、使い方をよく検討しないとうまくいかない場合も多くあります。

なっちゃん

魔法じゃないですからね…クラウドファンディングは…。

なっちゃん

ゆいまつりクラウドファンディングに至る背景

はい、俗に言われるクラウドファンディングとは異なる一面が共有できて良かったです。その上で、今回は2019年2月に実施した「ゆいまつり」におけるクラウドファンディングの背景や経緯についてお三方にお聞きしていきたいと思います。

としちる

まりあんぬ

今回のゆいまつりは第8回目となる祭りでした。「ゆいまつり」という名前の通り、人と人を結ぶ機会として位置づけていく活動です。ですが、第7回では実行委員も3名での実施となり、イベント規模に対してかなり少ない人数となってしまい、惰性的に続けてしまったことに問題意識を持っていました。第8回では地域の方との関わりを生み出していきたいねという話を堀下とするようになりました。

ほりぴ

そんな折、Labでも2年に渡り茨城県と取り組んできた『茨城県トライアル移住・二地域居住推進プロジェクト』に昨年度、Readyforが採択されて。県内で精力的に活動していたなっちゃんと出会ったのが11月半ば。いろいろと話している中で「一緒にクラウドファンディングをやりたいね」という話になった。なっちゃんは12月1日のLab2周年イベントにも駆けつけてくれてうれしかったし、一緒に仕事したいと思ってたんだよね。

ほりぴ

そうした偶然の出会いをきっかけにしつつ、一緒にクラウドファンディングを実施していくことになった。実際に始めてから思ったことは、Readyforとしてこんなにバックアップしてくれるんだ!」ってこと。純粋に驚いた。これまでは、キュレーターがほとんどいない中で、自分だけで起案してきたから本当にありがたかったし、助かった。
起案者のやりたい思いを実際に、達成可能なものに落とし込んでいくための支援を行うことを心がけています。

なっちゃん

としちる

具体的にはどのようなサポートをしているんでしょうか?
まず第一に、その人の事業やプロジェクトにとってのクラウドファンディングの位置づけを整理することから始めます。起案者の熱量だけではクラウドファンディングはうまくいきませんからね。そのあとは、施策やアクションに落とし込んでいくためのサポートをしています。

なっちゃん

まりあんぬ

Readyforでクラウドファンディングを実施することを12月中に決め、ゆいまつりスタッフサイドとしてどのような位置づけで起案するかを練っていました。1月20日には、公開のキュレーションイベントを起案者として行いました。そこでは、ページに載せる下書き文章を書き上げていて、クラウドファンディングを練り上げていく様を地域の人たちにも見てもらいつつ、夏川さんにチェックしてもらう機会としました。
クラウドファンディングページを作るとき、きれいなページ作成やリターンの選定からしてしまうことが多いんです。だけど本当に重要なのは、支援者が読んだ時に納得感が持てるかどうかという点です。そのため1月20日のキュレーションイベント時には「なんのために今回クラウドファンディングをやるのか?」「誰のためにやるのか?」を聞いていきました。3時間ほど話し合いましたね。

なっちゃん

まりあんぬ

そもそもの第7回における反省や次の第8回に向けたキーワードとしての「みんなで」といった部分を夏川さんが掘り下げてくれました。さらに、クラウドファンディングを応援してもらいたい「OB・OG」をはじめとした人々に向けてのものへとブラッシュアップすることもできました。
メインメッセージはなにで、それを伝えるためにどのような構成にして、どのような要素が必要なのか、主にまりあんぬさんと堀下さんから話を聞きつつまとめるお手伝いをしました。他にも個別具体的なプロジェクトに応じて、聞き役となり、アドバイスをしていますね。

なっちゃん

ほりぴ

このイベントをきっかけに方向性は完全に定まったよね。しっかり指摘してくれてとてもありがたかった。

まりあんぬ

自分の感情を表にはっきり出すのが私は苦手だったので、1月20日のイベント時における最初の文章はゆいまつりに向けた感情を上手く表現できていませんでした。ですが、イベントをきっかけにしてゆいまつりに向けた思いを夏川さんに引き出してもらいました。アドバイスを持ち帰り、再検討した中でクラウドファンディング実施に向けて勢いづけるようになったと思います。

なっちゃん

あえてしらないフリをして疑問や違和感をぶつけることはプロジェクトページ作成において大事なことだと思っています。近しい間柄だと言いにくいこともありますよね。一番近くの第三者として問いかけられるキュレーターであることを心がけてます。でも実は、思い切って聞くのは怖い時もありますよ(笑)

ゆいまつりクラウドファンディングの実施から成功

これまでゆいまつり開催に向けたクラウドファンディングの裏側をお聞きしましたが、2月いっぱいにかけて実際に行われた挑戦期間はどうだったんでしょうか?

としちる

まりあんぬ

私にとっては涙の日々のはじまりでした(笑)先ほども言ったように、前に立って自分の意見を発することはあまり得意ではなかったこともあり、クラウドファンディングをどう伝えたらいいか分からなかったというのが正直なところです。
俺も自分の経験からできる限りのアドバイスをしてはいたんだけど、2月前半、まりあんぬは全力でエンジンがかかっていたわけではなかったよね。

ほりぴ

まりあんぬ

2月15日の「つくば100人会議」に登壇するための事前準備をしている中で、「なぜ“まちづくり”をやるのか」を考えていき、ゆいまつりに挑戦していく上での自分自身のライフストーリーがはっきりしていったんです。そこからは、以前にも増して自分の感情を込めてクラウドファンディングについて伝えられるようになりました。
(うんうんと深くうなずく)

なっちゃん

としちる

夏川さんがしきりにうなずいてますが、クラウドファンディングをやり切っていく中で「自分の位置づけ」がストーリーとして出来上がっていくのは重要なのでしょうか?
クラウドファンディングに関わる中で、「自分でやりきるんだ!」と思えることはとても重要ですね。体裁を整えるよりも、「やるんだ!」と意識してクラウドファンディングに向き合えると周りも期待感を抱いて応援してくれるようです。嘘・偽りがあると文章や会話の中で伝わってしまいますからね。

なっちゃん

まりあんぬ

「つくば100人会議」で出会った人がクラウドファンディングに支援してくれました。気持ちを寄せてくれる人がいたことがうれしかったです。

まりあんぬ

ただ、残り一週間のタイミングで静かに怒った投稿をFacebookでしました。これまでゆいまつりを惰性で続けてしまった側面があったことに対してです。「惰性で続くものはつまらないし、非生産的で、そんなものになるくらいなら潰れればいい」ということを打ち出して、さらにそこから最後の勢いがつきました。
想像もできないことをしてくれるから、人は盲目的になると面白いですよね。

なっちゃん

としちる

最終的に達成できてよかったですね!無事に終えてどう思いましたか?
やりながら徐々に周りの人も支援してくれたり、内容を読んでくれたり、その上で投稿をSNSでシェアしてくれたり。いろんな人と一緒に走っているんだということを実感できたクラウドファンディングでした。多くの人と関係を築きながら動かすことができるクラウドファンディングは“まちづくり”のツールとしても面白いなと思っています。これが“まちづくり”なんだと感じたという意味で、5,6年における学びの集大成でした。

まりあんぬ

最後に一言

としちる

Labを介して生まれたひとつの挑戦の裏にはどんな背景や経緯があったのかが分かりました。これまでの話を受けて、Lab代表である堀下さんはどのように思いましたか?
個人的な指針として「あらゆる挑戦を応援したい」と掲げている上で、今回の取組においては、まさに「最後まで信じ切る」ことに尽きたと思ってる。現場で支える立場として、サポーターとはまた違う、メンタリングをする立ち位置も重要だと思うようになったし、地域に根を下ろしたコミュニティスペース運営者として人と人、人とプロジェクトとを繋ぐ部分でも応援できる、と改めて感じたよ。そういった意味でもクラウドファンディングサービスを提供するReadyforとあらゆる挑戦を応援するコワーキングプレイスとで挑戦者を応援し続け、価値共創していける、と確信した。

ほりぴ

としちる

キュレーターとして一歩引いた立ち位置としては夏川さんはどういう位置づけをしていきたいと考えているでしょうか?
一人ひとりのやりたいことを支えていくという思いは私も一緒です。ただ、クラウドファンディングのプロフェッショナルとしては、クラウドファンディングを実行者の活動のどこに位置付けるかや、実行者の思いを伝えるためのより魅力的な魅せ方はなにかを提案する専門的な役割を担っていきたいです。

なっちゃん

としちる

初挑戦をしたまりあんぬから最後に一言お願いします。
“まちづくり”は地域に住んでいる人たちがまちに対する関心を持って、お金を地域に還元させるといった活動だと考えています。だから実際にクラウドファンディングを通して、そのような地域の人々との関わりを持つことができ、その一つの実感を得ることができてよかったです。

まりあんぬ

まとめ

冒頭にもあった通り、クラウドファンディングは「めんどくさい」資金調達のひとつです。「自分のやりたいことに支援でお金を集めるなんて」という声を聞くこともあります。プロジェクト内容によってはそう捉えられても仕方ないものもあるでしょう。

しかし、個人化されていく社会環境の中、人と人が出会う場を生み出すこと、まつりを通して地域に根付く企業や自営業者が金銭的なやり取りが交わされることを狙ったような今回の事例において、クラウドファンディングは有効な手段のひとつだと思います。

挑戦者にとっては「ネット上で自分をさらけ出す」ことを通して自身と向き合うだけでなく、自分を取り巻く他者(家族・友人・知人・地域社会 etc.)との「関わり」に巻き込まれていくのがクラウドファンディングのようです。

単にものやサービスの「生産・消費」という関係に分け隔てられているのではなく、その境界線が個々の人生や他者との関わり、さらには地域の歴史をはじめとしたものとしても結びつく可能性があると言えるのかもしれません。

当然、いち個人で活動することには限界もあります。ですが、クラウドファンディングを推進するサービス提供者としてキュレーターというサポートの専門職があるということ、その裏でもさまざまな努力があることも、今回のインタビューでは垣間見れました。

日常的にではありませんが、Labではこのような「まじめな」会話が飛び交うことも珍しくありません。が、「ふまじめ」に開かれた場でもあります。ぜひ、なにか自分の殻を破る新しい挑戦をしたい方は一度訪れてみてください。

ではでは!

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